ド素人がピアノ伴奏してみた系

ピアノメインの音楽関係

2021年に入ってから、急にピアノを弾く機会が発生し、しかもそれが続いている。20数年振りにピアノを再開して2年と少し、本来ならとても人前でピアノを弾けるようなレベルでもないのに、1月のホームコンサート3月の協会演奏会、同じく3月の発表会と、平均すると月に一度もピアノを披露している哀れなデブオヤジ。。。

3月の協会演奏会が終わった後の食事会の最中、主催の大先生が片田舎に購入したお宅でコンサートが企画され、そこでピアノを弾くことになってしまった。しかも、ピアノ曲だけじゃなくて、大先生のフルートの伴奏まで・・・

大先生が行う有料のリサイタルは、もちろんプロのピアニストの方が伴奏をするんだけど、無料系のコンサートの場合は、県内で地元ピアニストとして活躍なさっているお医者さんが伴奏を務めている。でも、今度の片田舎コンサートは、片田舎過ぎて緊急対応に難が発生するため、お医者さんとしては物理的に無理。そこで私に白羽の矢がとつぜん命中。

大先生は、「田舎のお年寄りを集めたコンサートだし、童謡とか小品を数曲やるだけだから。アナタにも少しピアノ弾いてもらって、お茶飲んだりしている間に時々演奏を挟むような、気軽なコンサートだから心配ないのよ。フルートの曲もアナタに任せるから弾けそうなの選んで」などと言うので、しぶしぶ承ることに。

えらい事になってしまった。大昔、校内の合唱コンクールや学芸会の伴奏とか、キリスト教会のオルガニストとかの経験はあるけど、楽器の伴奏などしたことが無い。しかも20年以上前の経験だし、自分のピアノ曲でさえ、まともに弾けないのに、人様の伴奏などありえない。

でも、引き受けさせられた以上、頑張らなくてはならない。2週間後に私の発表会が控えていたので、その翌日に曲を打ち合わせすることになったから、発表会の練習と並行して曲選び。スタイン先生にも楽譜を貸してもらったりして、童謡系の曲を5~6曲ほど見繕い、ゆるゆる練習も開始した。

で、2週間後の、発表会の傷も生々しい発表会翌日、選んだ曲の楽譜を持参して大先生宅へ行くと、状況がすっかり変貌していた。なんでも、片田舎のご近所ジジィが、「コンサートで時間が余るならハーモニカでも披露してあげようか」などと言い始めたらしく、大先生はすっかり御立腹。自分のコンサートでハーモニカを吹かせるわけにはいかない!と戦闘モード全開になっていたのだ。あれよあれよと言う間に、クラシック曲と日本唱歌合わせて9曲もフルートを吹く事が決定し、私のピアノ曲も3曲弾くことになってしまった・・・

で、3日後に初回の合わせ練習が大先生宅で行われることも同時に決定。
えっと、、、3日後までに9曲も???
無理でしょ、と思ったが大先生は戦闘モードなため、聞く耳持たず。「独りで練習するより最初から一緒に練習した方が、感じも分かって効率的よ。弾けてなくてもいいから」と押し切られる。

はぁぁぁ。片田舎コンサートは一か月後。一か月で自分のピアノ曲も合わせて合計12曲も仕上げなければならない。そのうち一曲は総会演奏会と発表会で弾いた変奏曲(これも弾きたくなかったのだけど、大先生のお達しで弾くことに)だから新たな練習は必要ないけど、それにしても、私には無理って感じ。そして後は、シベリウスとチャイコフスキーの小品を一曲ずつ弾くことになった。

それから本番までの一か月、自分のレッスンの練習曲はツェルニー以外はお休みして、片田舎コンサートの練習に明け暮れることになった。そして、本番一週間前の合わせ練習では、急遽アンコール曲も1曲プラスされてしまった。なので、自分のピアノ3曲とフルート10曲の合計13曲・・・気の遠くなる数字。

ピアノの伴奏って、難しい。ただピアノが弾けるだけではダメ。注意点がたくさんあって、普通にピアノを弾く感じで伴奏してはいけないのだ。特に楽器の伴奏だと、合唱の伴奏よりも難しい。そして、今回新たに勉強した事なのだが、楽器の中でもフルートの伴奏は、さらに難易度が上がるらしい。

フルートは、吹いた息の半分くらいは音にならず、漏れてしまう楽器。そして、音域によっても漏れる息の量が変化し、結果的に音量が小さくなったりする。これはどういう事かと言うと、ffで吹こうとしても小さくなったり、ppで吹こうとしても大きくなってしまったりするという事。なので、楽譜の指示だけじゃなく、フルートの音域に合わせて、伴奏のピアノも調整が必要なのだ。

そしてフルートは音が柔らかく、しかも音量も他の楽器よりは小さいうえ、コントロールもできなかったりするため、ピアノに喰われてしまいやすい。ピアノ伴奏を、ピアノソロ曲と同じようにエスプレッシーヴォで弾こうものなら、主役のフルートがかき消されてしまう。艶やかで芯のあるピアノの音を、出さないように出さないように常に気を付けていなければならない。

音量のレンジも、基本はp(ピアノ)で、強くてもf(フォルテ)、間違ってもffなど出してはならない。ピアノをずっとp(ピアノ)で弾くと言うことは非常に難しく、フォルテ以上に体が疲れる。なぜかと言えば、フォルテなんかで弾く場合、腕の重さとかをそのまま鍵盤にあずければフォルテが出るのに対し、p(ピアノ)で弾く場合、腕の重さや体重なんかが鍵盤に全部伝わらないように、自分自身の力を使ってセーブ&ホールドが必要。なので、余計に力を必要とする。例えて言うなら、背もたれに体重をあずけて座っているよりも、背もたれ無しで椅子に座り続ける方が疲れる、みたいな。

また、普通にピアノを弾く場合、和音やアルペジオなんかの最高音がメロディーだったりするので、いつも右手小指とかを強く弾いてメロディーを浮き立たせているため、この弾き癖がついてしまっている。でも、楽器の伴奏だと、その最高音のメロディーは楽器が受け持つので、ピアノの最高音が強くならないように、常に意識が必要。ピアノはあくまで伴奏で、和声の一部分。メロディーを奏でではいけないのだ。で、これが非常に難しい。右手小指など、常に強めに弾く癖がついているから、本当に常に意識を保たないと、ちょっとでも気を緩めると音が出すぎてしまう。

さらに、ピアノ伴奏の場合、右手はソロ楽器などと音域がかぶってしまうから、ソロ楽器を喰わないように柔らかい音色で小さめに弾かなければならないのに、左手の音域はソロ楽器には無い音域だから、下支えのために強めに弾かなければならない。特に、ベース音は、和声の根幹であるし、ソロ楽器は間違っても出さない音だから、ピアノだけが支え持つ音。なるべく深く大きい音で弾かなければならない。

普通にピアノを弾く場合、ベース音はさて置いたとしても、普通は左手が伴奏部分で右手がメロディー部分な訳なので、シンプルに言えば右手は強く、左手は弱めに弾く場合が多い。でも、楽器の伴奏だと、先述の通り、ざっくり逆になる。左手は強めに、右手は弱めに、でもベース音は深く大きめに弾く。

これが本当に難しい。ピアノの弾き方が根本から違う。なので、何度も録画し、スタイン先生にもレッスンで見てもらって調整し、修正を繰り返しながら練習した。

しかも、ソロ楽器は音楽に揺れやタメが常に生じるし、当然のことながら息継ぎも必要なので、そのタイミングも計らなければならない。自分のペースでピアノを弾くわけにはいかないのだ。常にソロの音を聴いて、それに合わせて行かなければならない。そのためには、伴奏を弾くのがやっと、というレベルでは余裕が無いので、ピアノ伴奏はちゃんと仕上げておかないと対応できない。

本当に本当に難しかった。なんで自分がこんな思いをしないとならないのか?などと疑問が生じて来たり、自分のレッスンを足踏みさせて他の練習をしないとならない状況もストレスになった。そして、当たり前の事なのに実際練習をやるまで気が付かなかったのだが、都合1時間くらいの演奏時間のプログラムを練習すると、一回練習しただけでも1時間かかるのだ!! こんな単純なことすら、わかってなかった。2回ずつ練習したら2時間! いくら時間があっても足りない。しかも、練習期間は一か月。毎日1回練習しただけじゃ、30回くらいしか弾かないことになってしまう・・・

でも練習時間を増やすにも限度がある。家の雑事などは後回しにして時間を捻出し、食事も買ってきて済ませたり、冷凍食品食べたり、クローゼットの中が洗濯物の山になったりと、ピアノだけじゃなく精神的にも大変な一か月だった。

でも、なんかピアノの壁というか、これを超えたら、一つ壁を突破して成長できるような、そんなターニングポイントなのかも知れないとも思ったし、やれるだけの事はやった。

自分のピアノ曲の3曲は、当日になっても仕上がり切らず、本番直前の練習でもつっかかったりしていたレベル。もうあきらめるしかない。でも、フルート伴奏の方は、今の自分のレベルではこれ以上無理だろうと思えるくらい練習して仕上げたので、最悪、伴奏の迷惑だけはかけまい、と意を決して本番を迎えた。

本番は、初回の片田舎コンサートだったせいもあるのか、コロナ禍なのに椅子が足りなくなるほど聴衆が詰めかけ、大盛況。窓は常に全開にしておくなどのコロナ対策も講じ、おしゃべりなども控えていただいて無事終了。

自分のピアノ曲は、小ミスはあったが奇蹟的に止まらず演奏でき、伴奏の方も大事故は起こらず、弾き切った。と言っても実は、フルート一曲目でメインのクラシック曲の最中、発表会でも起こってしまった楽譜をめくりすぎる事態が発生。万全の対策を楽譜に施し、練習中は一度も失敗しなかったのに、本番では楽譜が2枚めくれてしまった。でも、頭に入っていた左手だけで伴奏を継続し、落ち着いて右手で楽譜をめくり直して、なんとかこなした。事故には違いないが、音楽を止めることなく対処できたので、自分自身としては成長を感じた。

ま、伴奏を間違ってしまったことには変わりないんだけどw

あぁ、これでやっと一息つける、人間らしい生活が取り戻せる。。。とホッとしたのも束の間。片田舎コンサート終了後の懇談中、一か月後に行われるホームコンサートで、歌の伴奏をすることになってしまった。

まだ自分が弾くピアノ曲の練習も開始してないっていうのにw

つか、笑い事じゃなかった・・・

どうしよう。。

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