バイエルを熱く語る

バイエルを始める準備

昔、ウルトラクイズというテレビ番組の問題で、ピアノ教則本のバイエルは ドイツのバイエルン地方がその名の由来である、マルかバツか、と言う 問題が出たのを覚えていますが、答えはバツです。

バイエルとは、フェルディナント・バイエルさんと言う名前のドイツ人が、 初めてピアノを弾く人たちのために書いたピアノ入門書なのです。 バイエルさんは他にもたくさんの曲を書いたらしく、事実バイエル教則本 にも作品番号101と記されています。今日ではなぜバイエルさんの作品番号 101の曲集だけを指してバイエルと言うのか?答えは残酷にして単純明快です。 他の曲が忘れ去られてしまい、作品番号101の曲集だけがメジャーと して生き残ったために、バイエルといえばそれはすなわち作品番号101 の曲集を指す事になってしまったからです。祇園精舎の鐘の声…です。

しかも、バイエル教則本は世界的には決してメジャーな入門書 とは言えないらしく日本以外ではあまり使用されてはいないという噂もあります。 ではどうして日本ではバイエル教則本がメジャーとなったのでしょうか。 それは日本における西洋音楽の創成期にバイエルが用いられ、バイエルを 習得したその後の指導者たちがバイエルを使用し続け、今日まで続いて いるというのが通説のようです。もちろん日本においても今日となっては バイエル以外のピアノ入門書も多数使用されており、指導者の中には アンチバイエル派の方たちも大勢いらっしゃるようです。

なぜアンチバイエル派などと言う一派が形成されてしまった のでしょう?それにはさまざま取りざたされていますが、一言でいえば 習得する内容に偏りがみられ、使いようによってはそれが弊害にすら なりうる可能性があるため、ということになるらしいです。 詳しい考察は他で調べていただくとして、少し例を挙げれば、 右手は旋律、左手は伴奏といった曲が多くて左手を右手並みに動かす訓練が 不足する結果になる、伴奏パターンが分散和音ばかりで、さまざまなジャンルを 習得できない、等があるようです。

ですが、この講座は大人のための初めてのピアノ講座です。 悲しい事ですが、すべてにおいて柔軟な子供と違い、大人になってから ありとあらゆる事を指先に要求するのは大変な事です。しかも、ピアノを 弾いてみたい!というミーハーとも言える欲求を実現することに特化 して考えてみると、取り敢えず当面の間、ありとあらゆる事は 必要ないともいえます。また、右手が旋律・左手が伴奏ということは、 左手のパートを弾く事がそれほど難しくないという事も意味します。 これはどういう事に結びつくでしょうか? おそらく大多数であろう 右利きの人にとっては、曲が弾きやすいということです。この事は ピアノ風味を味わえればよいと考えている大人にとっては、 弊害どころかメリットでありうるのではないでしょうか。

バイエルは日本の中でピアノを少しでも嗜んだ経験がある 人なら、みんな知っていると言っても過言ではないくらいにメジャー な存在です。ちょっと?昔の子供たちの間では、「今、まだ赤?」とか 「えー、もう黄色?」などと言った会話が交わされており、私などは 何だか知らないけど雲の上のやり取りの様に感じられ、唯一解る事と言えば とにかく黄色はスゴイ、位なものでした。 これは当時、子供向けに出版されたバイエル教則本の一つに、全音楽譜 出版社(俗に言う全音)発行の「子供のバイエル」があり、それが 上巻(赤色の表紙)・下巻(黄色の表紙)の2冊に分かれていたためです。 子供たちの間ではどのくらいピアノが弾けるかを比較する「単位」 としてバイエルが使われていた訳です。

このバイエルの「単位」機能は子供の世界だけで使われて いたのではありません。それは大人たちの人生をも左右する単位として 今現在でも使われており、それに一喜一憂している人たちも少なく ありません。国家資格である保育士試験の科目には実技があり、 その中の一つにピアノの試験があります。実施される都道府県ごとに 試験内容が異なるのですが、どのくらいの難度のピアノ曲を演奏すれば 良いかの単位として「バイエル90番程度」などと規定されていたり、 それどころか「バイエル85番から95番までの中の一曲を当日 試験官の指定により演奏」などと言ったように、バイエルそのものが 試験曲であったりすることの方が多いくらいです。また、 小学校の教員採用試験受験科目の中にもおおよそ保育士と同レベル の音楽実技の試験があり、バイエルが大いに活用されております。と いうよりもバイエルの呪縛と言ってもいいくらいでしょう。

しかしこのことはすなわち、バイエルを終了すれば最低限 のピアノが弾ける、と国家が認めているのと同意義です。もっと言って しまえば「バイエルはピアノの(準)国家資格だ!」などと言ってしまったと しても、誰に迷惑がかかるわけでもなく、その実質的な内容からすれば 真っ当な主張とも言える訳です。ピアノを弾いてみたい、という穢れ の無いミーハー心を満足させ、最初に上がるピアノステージのゴール としてこれほど最適な教則本があるでしょうか。

この講座で使用するバイエルは、全音「標準バイエルピアノ教則本」 です。これからお求めになられる方は、これを購入してください。 既にバイエルを持っている、バイエルをもらう事ができるという方は、 もちろん購入する必要はありませんのでそちらをお使いください。

さあ、バイエル卒業への扉を開きましょう!

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