おからの煮物

おからの煮物和食

学生時代だった1990年代初頭、2年間ほど深夜勤務のコンビニバイトをしていた事が あった。そのお店で働いていた友人がバイトを辞めるという事になって 後釜に入る事になり、程なく私の友人も加わり結局2年もダラダラと バイトしたのだが、勤務時間は夜の10時から朝の8時までで大変長く、しかも 終わりの時間が通勤通学時間のピークであったので辛いものがあった。 その上そのコンビニは、当時住んでいた街の駅裏すぐの所にあり、客層も全般的に あまり良い感じではなかった。

そのコンビニはカウンターに客席があり、うどんやそば等の麺類を 注文して食べる事ができたのだが、駅の近くな所為もあってタクシー 運転手のサロンと化していた。場所柄、酔っ払いも多く店内の衛生環境 を維持するのにも苦労し、酔っ払いが来なくなる時間帯になると今度はお勤め帰り のお姉さま達が、その筋な雰囲気の男性とともに大挙して押し寄せて来た。 その頃は、バブルは終わったと言われ始めた時期でまだまだ景気は良かったのだ。

一番最悪だったのはオヤジどもであった。オヤジが金を持つとロクな ことがない。あの頃は普通のオヤジでも財布の中に万札が何枚も入っていた。 束で入っている事もそれほど珍しくないくらいだった。そういうオヤジは くだらない所で自己顕示欲が強く、常に偉そうにしていないと気が済まない のだ。買物に来てるくせに店内を回らない。カウンターに来て、あれ持ってこい、 これ持ってこいと欲しいものを口にしながら、万札をポイと投げてよこす。 店内を回ったかと思えば、商品を棚から床にどんどん投げ落としてからレジに来て、 拾って持って来い、と万札をポイなんてこともあった。

深夜に爆音付きで徒党を組んで行動している若者も多かった。その中に は小さな入れ物を持って来て、カウンターでお湯を少し入れてからトイレに 入るような人もいた。とても怪しいが、しかし何が怪しいのかは私達 には判らず、指をくわえて見ているしか方法が無かったのだが、後日、 店内のトイレで覚○剤を使ったという供述があったとかで警察が捜査 に来た事もあった。

港町だった所為か、ロシア方面の人もたまに来店した。彼らは数人の 団体でやってきて、お土産を買っていくのだが、コンビニなのにガムを 箱ごとお買い上げしたりするので、発注側からすれば大変迷惑だった。 しかも大抵赤ら顔で騒がしいため、他のお客からはクレームが付くという おまけも付いてきた。駅近くには英会話教室なども多くあるため、英語圏 な外人さんもよく来た。彼らは中華まんを指差し「中に肉、入ってるぅ?」 などど英語で話しかけてくるのだが、緊張のあまり「はい」と日本語で 返事したりして友人に大笑いされたり、店内をウロウロした挙句に意を決して モジモジしながら「コンドー○スありますか?」と日本語で訊いて来た人 もいたりして、コン○ームに複数形の「ス」が付いている事が、言語としては 正しくても、おかしくておかしくて後で爆笑したりした。

夜も明けて明るくなってくると、犬のお散歩途中に立ち寄る人や、スポーツ紙を 買いに来る人、寝ぼけ眼にエプロンしながら一つ二つの商品だけを買いに 来る主婦が多くなり、バスが運行を始めると通勤通学途中の人が押し寄せ、 あわただしい時を迎える。そして「もう限界、疲れた」と思う頃にバイトが終わる。

バイトにはバスで通っていたため、駅のバスセンターまで歩いていくのだが、 その途中に小さな豆腐屋さんがあった。その店の前にはゴミが出してあるの だが、そのゴミの中に、まだ温かくて湯気が立っている「おから」があった。 おからは豆腐のカスだと知識としては知っていても、スーパーなどでおから は売られているし、家畜とかの飼料になったりすると聞いていたので、 もともとゴミ・カスを意味する「おから」と呼ぶなんて失礼だ、卯の花と 呼ぶべきだ、などと常々一人で勝手に怒っていたのだが、そこに出されているのは 紛れも無く「おから」と呼ばれて当然の状態の「おから」であった。 まだまだバブルの興奮冷めやらぬ時代であったが、湯気の立ったその「おから」を眺めて いると、いつかバチが当たると思ったものだった。

おからは足が速いので買ってきたらなるべく日を置かずに調理する。おからは、煮る 前に一度フライパンなどでカラ煎りすると、臭みが気にならずに美味しく なる。その後、お好みの具、ニンジンや椎茸、油揚げなどを入れて、水を ひたひたになるくらい入れ、昆布茶、ダシの素、みりん、砂糖、薄口醤油 で味付けをして煮る。煮ているとマグマのようにポコポコいうが、水分が 少なくなると静かになって、おからが動かなくなる。そうしたら完成である。 例によって味付けできない人は、めんつゆを、かけうどんの汁より少し 薄いくらいに割ってから使うと良い。入れる具も、お惣菜の五目ひじき を買ってきてそのまま入れても良い。多めに作っておいて、出来上がってから 熱い内にパック小分けして冷凍保存して置けば重宝する。


材料?回分おから一袋
調味料ダシの素&昆布茶・少々
みりん・お好みで
砂糖・お好みで
薄口醤油・みりんと砂糖を合わせた量と同量
入れる具お好みで・人参、椎茸、油揚げ、さつま揚げ、インゲンなど
作り方おからはいったんフライパンで乾(から)煎りしてから、水をひたひたに入れ、調味料と具を加える
おからがグツグツいわなくなるまで蓋をせずに煮たら完成
備考調味料はめんつゆでも良い。少し薄味の方がたくさん食べられる。

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