北海道の味・いもだんご

いもだんごお菓子

注 このエッセイは2004年に書いたものです。現在の状況はわかりませんので悪しからず・・

以前住んでいたところに「おかめ食堂」と言う名前の お店があった。周りにはほとんど人が住んで居ない田舎の国道 沿いに、ろくに看板も出さず、赤提灯がプラーンと入り口に垂れ下がって いるような佇まいの「おかめ食堂」は、年金を貰うくらいの歳のおばちゃんが 独りで切り盛りしていた。店の中は、カウンターが5席くらいに小上がり が一つ。小上がりには、ちゃぶ台タイプの不揃いのテーブルが2つほど ならんでおり、傍らにはおばちゃん手作りの座布団などが置いてある。 店の中にはカレンダーから切り取ったグラビア部分があちこち貼られて おり、旅行が大好きなおばちゃんらしく、全国津々浦々のご当地提灯が 三桁の単位で所狭しとならんでいる。

食堂と銘打ちながらもメニューは、ほぼラーメンだけで、その ラーメンも今時のラーメンとは一線を画したシンプルなラーメンで あった。しかしコテコテせずにスープと麺と少しの具で味わうそのラーメンは ときどき食べたくなるような懐かしい味であった。

メニューが「ほぼ」ラーメンだけというのは、アットホームな おばちゃんの食堂だけあって、おばちゃんお手製の山菜の煮物や漬物、おかず味噌 などの保存食がカウンターに置かれていて、どうぞご勝手に食べてください 状態になっているからだ。

カウンターに置いてある食べものの中で唯一値段がつけられて いるのはカゴの中にいくつか入っている「むしたまご」だけだ。むしたまごは 要するに茹でたまごなのだが、おばちゃんのこだわりで蒸して作られて いるらしい。しかし、そのこだわりの品である「むしたまご」も、 サービスで食べさせてくれる事が多く、お金など払うことも ほとんど無かった。

そんな「おかめ食堂」であったが、ラーメン以外にきちんと お金を払って食べるメニューがもうひとつあった。イモダンゴである。 おばちゃんのつくるイモダンゴは、一つあたりがとても大きく、揚げ焼き されているために外側はカリっと、でも中はモチモチのだんごで、砂糖醤油 を絡めて食べる正統派のものであった。おばちゃんの人柄と懐かしい イモダンゴの味を求めて、遠くからもお客さんが来ており、私も 行くたびに必ずイモダンゴを食べていた。その所為かイモダンゴ と言えば真っ先に「おかめ食堂」を懐かしく思い出す。

イモダンゴと言われても、見たことも食べた事も無いと言う 人もいるかも知れない。イモダンゴのイモとは、じゃがいもの事で、ダンゴ と言われているが実際はダンゴと言うより餅に近い。イモ餅と言われる 事もあるくらいだ。そのイモで作った餅は、北海道の人間なら知らぬものは 無いが積極的に食べられるわけでもない、北海道の郷土料理である。 しかしシンプルで素朴なその味わいは、一度経験したら、ときどき無性に 食べたくなる事請け合いである。

ダンゴにするジャガイモは男爵イモを使用する。皮を剥いたら イモの重さを量っておき、その重さの3割~5割の分量で片栗粉を用意する。 イモの味わいを生かしたいなら3割程度、よりモチモチを楽しみたいなら 5割ほどと言った感じだ。皮を剥いたジャガイモは適当な大きさに切って やわらかく茹でる。少々茹ですぎても、後で入れる粉で調整できるので 簡単につぶれるくらいまで茹でる。やわらかくなったらザルにあげて水切り し、そのまま2分くらい置いて粉吹きイモにする。その後、鍋にイモを 戻しまだ熱い内にスリコギなどで満遍なくイモをつぶす。イモの形が 無くなったらすぐに量っておいた片栗粉を混ぜて捏ねる。イモはまだ 熱いが、何とか手で触れるくらいの熱い温度のうちに粉と混ぜて捏ねないと モチモチにならないので注意。

でんぷん質の食物は、水分と高い温度でα化してネバネバになる。 冷めるとβ化してしまい、劣化してボソボソになるのだ。だからイモダンゴ を作るときには、イモがα化しているうちに片栗粉を加えて捏ねることにより、 片栗粉のでんぷんとジャガイモのでんぷんを一体化させ、よりモチモチ になるようにするのだ。加える片栗粉のうち、半分くらいを粉タイプの 白玉粉・餅粉にすると、なお一層モチモチするのでお好みで使用する。

粉を加えた後、捏ねていると粘り気が出てきてまとまってくる。 生地が滑らかにまとまったら空気を抜きながら円筒形に成型する。そして ぴっちりラップで包み、冷蔵庫で冷やす。冷蔵庫で冷やすとでんぷん質が β化し硬くしまるので、スライスしやすくなる。冷えたら1cm厚 くらいに切り、中温で色づくまで揚げるか、多めの油でこんがり焼く。 油で揚げる場合は、一度冷やして切らなくても、成型するときに平べったい 丸餅状にしてそのまま揚げ油に投入して作る事もできる。

食べるときは、熱い内に砂糖と醤油を同量づつ混ぜたタレを イモダンゴに絡め、バターを乗せて溶かしながら食べる。みたらし団子 のタレや、ゴマ団子のタレなども美味しい。また、つぶれた団子状に小さめ に成型したものは、けんちん汁や豚汁などの汁物の具として入れても 楽しめる。


材料1回分男爵イモ5個くらい・好きなだけ
片栗粉皮を剥いたイモの重量の3割くらい
最低1割でも何とか作れるがモチモチしない
5割入れるとよりモチモチになる
お好みで餅粉を入れても良い
調味料砂糖・醤油を同量混ぜ合わせ、タレにする
バター・好きなだけ
作り方皮を剥いたイモをやわらかく茹でて粉吹きイモにする
イモを跡形も無くつぶし、粉を混ぜて熱い内に捏ねて円筒形に成型し、ラップで包んで冷蔵庫へ入れる
冷えたら1cm厚にスライスし、多めの油で10分位かけてこんがりと両面焼いて、タレをからめ、バターを乗せる
備考出来上がったら熱い内に食べる。冷めると硬くなって美味しくない。
焼く前の団子生地は冷凍保存もできる。

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