ヤマハの電気ピアノ E-501

ピアノメインの音楽関係

現代では、ほぼ幻のピアノ。
何がまぼろしなのかと言えば、製造時期もわずか数年で生産台数も少なく、電気部品があったために、その電気部分が経年劣化し、完動品はほとんど残っていないから。

見た目もほぼ普通のアップライトピアノで、ほぼ普通のピアノアクションで動作し、中には弦も張ってあり調律も普通に必要なのだが、決定的に大きな違いがある。それは、ピアノ音を決定づける重大要素である、響板が無いのだ。

響板は、複雑な波形をプラスしながら弦の振動を増幅させ、ピアノがピアノたる音を出すのに欠かせない部分。この響板がないため、電気ピアノはピアノっぽい音が鳴りはするのだが、そのままではピアノほど大きい音量が出ない。音量を出すために備わっているのがピックアップとアンプとスピーカーだ。ピックアップで弦の振動を電気信号に変え、アンプで増幅し、スピーカーから音を出す。エレキギターと同じ。

この電気ピアノは、普通に生音を耳で聞く分にはピアノの音に聞こえるのだが、アンプ部分に線を繋いで録音したものを聴いてみると、完全にエレキギターの音で録音されてたくらいエレキギターと同じだった。おそらく、響板は無くても筐体などの木材部分がオルゴールの箱のように振動して、複雑な波形を醸していたと思われる。

でも、それ以外はあくまでアップライトピアノなのだ。

この不思議なピアノの利点と言えば、ピアノの弾き心地はピアノのまま、音量を小さくできるため、騒音問題にならないという事。特に集合住宅などで効力を発揮していたと思われる。

デメリットをあげるとすれば、響板が無いだけで後はほぼ普通のピアノと同じだったため、普通のピアノと重量がさほど変わらない事と、調律が必要な事と、電気部品が消耗品だったこと、など。それでも、ピアノと思えば電気部品以外はピアノと同じなので、自分にとってはメリットの方が大きかった。

でもなぜ、このステキなピアノが姿を消すことになったのか。
それは、デジタルピアノというものが出来たからだと思う。時期的にも、デジタルピアノの生産開始と、電気ピアノの製造中止?は一致しており、コンセプトから言っても、電気ピアノの役割は、そっくりそのままデジタルピアノへ移行した。もはや無用の長物となってしまったのである。

先ほどから電気ピアノについて「ほぼ」ピアノと同じ、という表現をしてきたが、この「ほぼ」とはどういう意味?と気になった方もいらっしゃるかも知れない。「ほぼ」の中身をご紹介すると、

弦が張ってあるのだが、普通のピアノより少ない本数。普通のピアノは中音以上の部分に弦が3本あるが、電気ピアノは2本に減らされている。そして、低音部分の弦も、1本が多い。(低音部分に関しては、ピアノがコンパクトになればなるほど、低音弦が1本のエリアが増えるので、これは電気ピアノに限った話ではない)

ハンマーがフェルトではなく、何か動物の皮のような素材でできている。ハンマー自体の大きさも普通のピアノよりはかなり小さめだった。しかも固い。

と言った感じ。でも、見えない部分なので普段は意識することも無い。

この電気ピアノが家に来たのは平成13年の夏。その数年前に、ヤマハのコンパクトアップライトを処分して、ヤマハのデジタルピアノを買ったのだが、やはりデジピでは物足りなく、電気ピアノが欲しくなった。が、当時すでに製造中止であったため、オークションなどを駆使してようやく見つけたものだ。しかも、新幹線で2時間くらいかかる所まで現物を下見に行ってまで。

その後、平成31年までずっと愛用し、大切にしてきた。電気部品部分も、運がよかったのか当たりがよかったのか、最後まで何とか使うことができてた。

が、ピアノを再開し、この電気ピアノでは用が足りなくなってしまって、中古アップライトと入れ替えることになり、泣く泣く処分。本当はとっておきたかったのだが、そんな余裕など我が家に無かった。

2021年現在、電気ピアノの後継としてハイブリッドピアノが存在している。
ハイブリッドピアノは、ピアノのアクションが備わっている(でもダンパー部分が無かったりして厳密には普通のピアノのアクションと違う)が響板も弦も無く、音がスピーカーからデジタルで発音されている。さらに最近では、スピーカーの代わりに響板に振動を与えて発音されるハイブリッドピアノもあるくらいだ。

電気ピアノは響板が無かっただけ
最近の高級ハイブリッドピアノは弦が無いだけ

この先のピアノ界がどうなっていくのが分からないが、色々迷走を続けていくのか、それとも贅沢にアコースティックへ回帰していくのか、ピアノの歴史に咲いた徒花、電気ピアノが何かを問いかけているかも知れない。

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