ピアノの先生選び~大人の再開ピアノ その13

ピアノレッスン備忘録

その12のつづき

モヤモヤが収まらなくなってしまった、きっかけがあった。

これは、奥さん先生には直接関係ないのだが、奥さん先生の所へ通い出して1年と4か月くらい経った頃、お世話になっている大先生のリサイタルが県内であり、その伴奏者として、東京からピアニストの先生が来られることになった。で、当日予定していたと思われる、伴奏の譜めくりの方が都合が悪くなったとかで、急遽、私が東京のピアニスト先生の譜めくりをすることになったのだ。

リサイタル数日前に県内入りなさった東京のピアニスト先生も含め、リハーサルが大先生の自宅で行われたのだが、リハーサルが終わって、食事や歓談をしている中、私が疑問に思っているピアノに関することを訊いてみた。そしたら、その東京のピアニストの先生がレッスンをつけてくれるという。

30分ほどだったが、フレーズの始め方終わり方、基礎練習の仕方、アルペジオの時の手首の使い方など、本やネットだけでは得られない、実地のレッスンだった。本当に、わずかな時間でもためになるレッスンで、今でも基礎練習の時には心掛けているくらい。

その時、自分の中で押し殺していた事実に、はっきりと気づいてしまった。
ピアノのレッスンというものは、本来こういうものなのだ。
自分だけで解決できるなら、そもそもレッスンなど受ける意味がない。
自分では解決できないことの解決と成長をサポートするのがレッスンなのだ、と。

それから1か月、ずっとモヤモヤ、モヤモヤ、モヤモヤ。
自分自身がピアノの壁にぶち当たっている最中だったことも相まって、ついつい、他のピアノの先生の情報を検索してしまう日が続いていた。
それでも、奥さん先生のところを辞めよう、と決めていたわけでは無かった。

そんな時、奥さん先生の教室の発表会が行われた事を知った。

奥さん先生の教室では、2年に一回発表会が行われている事は聞いていた。1年位前にホールの予約をしないとならないらしく、その予約に行ったら他にも希望者が居て抽選になったとのこと。その抽選に当選したと嬉しそうに話があった時、発表会、出る?考えてみて、と言われていたのだ。だけど、今年に入ってコロナもあるし、そもそも発表会の話も全然なかったので、きっと中止になったんだろう、くらいに思って特に気にも留めてなかった。

でも、その発表会数日前である私のレッスンの日、奥さん先生が珍しく他の子どもの話題を話し出した。「今度、中1の子が幻想即興曲を弾くんだけど、その子は度胸試しにストリートピアノで弾いてくるって言ってたのよ」、的な感じ。

へー、と思っただけで、その日は帰宅したけど、なんか引っ掛かる感じがして調べてみたら、奥さん先生門下の発表会が、その週末に行われることを知った。その時、自分でもびっくりしたのだが、とてつもなく悲しい気分になってしまった。

疎外感というか、置いてけぼり感というか。

そもそも私は発表会に出たいわけではない。仮に発表会の案内があっても断ったと思う。でも、案内すらされないなんて、最初から数のうちには入ってないということ。たとえ自分が出なくとも、奥さん先生の発表会には聴きに行きたかった。今まで、奥さん先生のピアノ演奏を一度も聴いた事がなかったし、奥さん先生が、何のためかはわからなかったが、ショパンのエチュードを練習していたのも知っていたし、機会があったら聴きたいと、ずっと思っていたし、少なくとも、発表会では聴けるだろうと思っていたのだ。

奥さん先生は、何も悪気は無かったと思う。ただ、奥さん先生の中で、私は数に入っていなかっただけ。メインは子供であって、大人はあくまでオマケ。きっと、発表会の案内をどうするか、考えることも迷うことも無かったのではないか。そもそもコロナ禍だし、最小人数で開催しようと考えていただろうし。

でも、そういう無意識の深層心理にこそ、本音がある。
奥さん先生から指導が得られないのは、私の好きにさせてくれている、と好意的に解釈してきたが、そうではなくて最初から、大人なんだから好きにさせておけばよい、という考えだったのだろうと思うと、無性に情けなかった。

「好きにさせてくれる」と「好きにさせておく」では、起きている事実に違いは無くても、起きている現実には大きな違いがあると思う。

その事に気づいてしまった後、私の中で、何かが無くなってしまった。
いい歳の大人が、とも思うのだが、ピアノに向かう気力が、あからさまに減ってしまった。
ちょうどそのころ、うちの猫の手術なども重なって、余計にピアノから遠ざかった。

そして、自分の気持ちが、もう修正できないとはっきりしたので、多忙を理由にして奥さん先生の教室を辞めてしまった。通い出してからちょうど1年半。

我ながら、情けない・・・・

つづく

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