ピアノの先生選び~大人の再開ピアノ その10

ピアノレッスン備忘録

その9のつづき

ババァは、その後も、暴言を吐き続けた。

ババァ「グランドで練習しないと、うまくは弾けない。ピアノ続けるつもりなら、グランドの一つも買え」
「グランド買えないなら、金払ってスタジオで練習するなり何なりしろ。本気度が足りない!」
「才能のないやつに限ってピアノ弾けるようになりたいとか言う。今まで指導した子にも、こんな才能もセンスもないやつが音大?って思うのが居たが、そんな子でも音大に行けるレベルまで引っ張ってやった」
「アタシは今まで、リサイタルも開いたし、演奏や伴奏もやってきたし、お金貰ってピアノ弾くっていう世界のシビアさ、ストイックさも経験してきてる。適当にピアノ弾くなんていうことは自分の中には無い。ただ楽譜の通り弾けば音楽が作れるなんて思ってるなら、ピアノなんてやめちまえ!」
「ここにグランド2台並べてるのだって、教え子をコンクールに出すためだ。大きな舞台の人前で演奏するってことは、こういう事だ。無理してでも見栄張ってでも、やらないとならんことはやれ!」
「そんな音の出し方してたら、ホールの最後列まで届かない! 届かないなら弾いてないのと同じだ! 自分の自己満の演奏なんて、音楽じゃない! 人に聞かせてナンボの世界だ!」
「今のそんなレベルじゃ、ショパンのエチュードなんて、一生弾けるようにならん。できないなんて寝言言ってる暇があったら、一分でも多く練習しろ!」
「うちに来ている子の親御さんにも、『今まで先生みたいな指導はされたの見たこと無い。こんな素晴らしい先生につけて、ありがたい』って言われてる。アタシについてこれない子なら、こっちからお断りだ。ついてこれる子だけ、指導する。文句があるなら、来なくていい。選ぶのはこっちだ!」
「あんた、自分でたくさん勉強してきたつもりかも知らんけど、あんたなんかよりアタシの方が何倍も勉強してるし、してきたし、知識も、あんたとは比べもんにならんくらい有る。音大に入って、先生について勉強して、人知れず努力して、こうやってピアノの世界で飯を食ってるんだ! なめんなよ!」

私は別に、人前で演奏したい訳でもないし、ショパンのエチュードなんて弾けるなんて思ったことも無いし、弾きたいなんて言ったこともないし、ホールの奥の人に演奏を届けたいなんて思ってないし、そもそも本格的にピアノをやりたい訳じゃない。あくまで趣味の範囲で自己満足したいだけで、それは一番最初から言っている事なんだけど、ババァは、いつ何がどうなったのかわからないが、勝手にいろいろ世界が広がったり進んだりしているらしく、それに合わない私に、イライラしてきているようだった。

はっきり言えば、もう、さっさとババァのところはやめてしまいたいと思っていたが、何事も判断するには早すぎる、もう少し、せめて3か月でも頑張ってみて、それでダメなら先生を変えよう。やらないうちに諦めちゃ、結局何もできずじまいだし、耐えるときは耐えないと成長しないし。それに、紹介してくれた調律師さんにも申し訳ないし。もう少し、もう少しだけ我慢しよう。せめて三か月は・・・そう自分に言い聞かせていた。

日々、ピアノの練習をする度に、ババァから言われた暴言を思い出し、反芻し、噛みしめ、なんでこんな嫌な気持ちでピアノを弾かないとならないのか、もう、何が何だか分からなくなってきていた。とにかく、なるべく心の中を無の状態にしようと心がけ、毎日ピアノを練習していた。

そうして、いつものように超絶ヘビーな心持で、いつものようにババァの家へレッスンに行った。
ツェルニーを弾き終えた時、ババァが言う

ババァ「あんた、この曲どうすんの? どうしたいの? もうこれで終了にしても、まぁいいと思うし、もう少しちゃんとしたいなら、もっとレベルを上げて勉強するのも自分のためになるし」

自分「私はこれで十分です。突き詰めて一曲を追求するつもりも最初からありませんので。」

ババァは、これでブチ切れたらしい。

ババァ「あんた、来るとこ間違ってる! そんなスタンスでピアノ弾かれたら、こっちが迷惑だ!」
「そんな生半可な気持ちでレッスンに来るなんて、失礼だろ!」
「保育園の先生にでも教えるような低レベルなピアノ教室なんて、そこら辺に掃いて捨てるほど転がってる。あんたは、そういうところで習えばいい。ここは、あんたが来るところじゃない!!」
「時間やるから、考えろ!」

・・・・・無言の時間が過ぎる。

時間やるから考えろってさ、お金払って今のこの時間を買ってるのは私だし、この時間の所有権があるのは私じゃね? それに、やめるかどうか自分だけで決められることじゃないっしょ。そもそも人の紹介で来てるわけだし、自分の一存で勝手にやめるなんて、そんなこと、いい大人ができることじゃないっしょ・・・

そりゃ、目の前がクラクラするほど腹も立ってるし、こっちから願い下げだ!!って捨て台詞吐いて、そのまま帰りたいのはヤマヤマだったけど、ぐっと堪えて

「今すぐに決められないので、申し訳ありませんが、もう少し考えさせてください。来週までには結論を出します。」

とだけババァに告げ、帰宅。
すぐさま、紹介してくれた調律師さんと連絡をとり、これこれこういう事を言われて破門になりました、と報告。調律師さんは、逆に申し訳ありませんでした。そういう事なら、やめた方がいいと思いますので、すぐやめてください。次の先生は、こちらで探しなおします、とまで言ってくれた。

はぁ、ピアノに限らず、自分の中のすべてのカテゴリー上に置いて、人生初の「破門」。。。
破門・・・・なんて残酷な響き。なんか、生きてる価値なし、っていう烙印を押されたような?

ババァ先生のところに通いだして、6回目のレッスンでの出来事だった・・・・

つづく



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