その4のつづき
すぐさま次の先生探しに取り掛かるも、そもそも田舎ゆえにピアノの先生が多くない。しかも、この辺りはネット社会が遅れているので、ネット上に情報が出てこない。
情報が出てきても、そもそも成人男性は、端からお断り!なのだ。
世の中の理不尽および不条理に憤っても始まらないので、ダメ元で伝手を頼ってみる。まず、今の家に引っ越してきてからお願いしている調律師さんに、「成人男性でも習わせてくれるピアノの先生は居ませんか?」と訊いてみた。
すると、探してくれるとのお返事! 数日後、さっそく先生を紹介してくれた。
調律師さん曰く「本格的に教えてくれる先生ですよ」との事。以前にも書いたように、自分は本格的にピアノをやりたいわけでは無いのだが、せっかく探して貰ったので、とりあえずお願いすることに。
次の先生は、還暦前くらいの普通のおばさん先生。コケシのような髪型に眼鏡、いつも、セーターかトレーナーのようなトップスにおばさんスカートといういでたち。ぱっと見、PTAの役員って感じの普通のおばさんなのだが、なぜが口調が「べらんめぇ」の、なんか一癖も二癖もありそうなババァ。。。
このババァ先生のお宅も、広いピアノ室にグランドピアノが2台。ピアニスト先生の所は、先生用のグランドピアノが某世界的ブランド系で、生徒用が古いC3だったけど、ババァ先生のとこは2台とも古いC3。他に、古めのエレクトーンもあった。
次の先生に習うにあたり、もう間違いをおかしたくないので、ピアノレッスンのレジュメを作成していった。具体的な内容は、ピアノ歴や経験した練習曲、自分の希望などをまとめたもの。特に重要なところは、自分の希望するレッスンの項。
「特に弾きたい曲がある訳では無い。ツェルニー50番を終わることが目標。」
「細かいことを追求せず、計算ドリルを埋めるように練習曲をすすめたい。」
「創造していくピアノではなく、お習字のようにピアノを習いたい。」
「そして、弾き方・奏法を強要しないで欲しい。」
これを最優先してほしい事項として、あらかじめ了承してください、無理ならあきらめます、とお願いする。ババァ先生は、わかりました、的な感じで、レッスンは始まった。
レッスンは、引き続きツェルニー40番と、やりたくないけどソナチネ、そしてハノンということになった。特にハノンは絶対との事。
基礎ができてないとどうしようもないし、曲で基礎を練習しても無理、譜読みもいらない単純な音型じゃないと、いろいろ考えながら基礎練習できないから、と。
はぁ、なるほど、ごもっとも。ハノンは好きじゃないけど、ピアニスト先生のところで痛い目みたし、基礎練習は基礎練習で独立してやることには賛成だったので、素直に従うことに。
さて、ハノンからレッスン開始。ハノンの第一部と第二部の多くは昔に終わっているので、とりあえず21番から。
ババァ先生は、「ハノンは四分音符=120で弾け。そのためには家では四分音符=132で練習するように」と宣う。早速、メトロノームに合わせて弾く。途中から隣のピアノでババァ先生も勝手に参加。でも、ババァ先生、どんどん遅れてくる。ババァの音は気にしないようにして、一生懸命に、メトロノームの棒を見ながら、ババァを無視して必死に弾く。
ババァ「メトロノームに遅れていく!合ってない!ちゃんと見て!!」
ババァ「いちいち鍵盤を見ながら弾くな。目線は楽譜に!」
ババァ「手首を動かすな!手首は固定!指だけで弾け」
ババァ「打楽器やってたくせにリズム感無いわ。ちゃんとメトロノームみてる?」
ババァも言ったように、自分は学生時代、ブラバンで打楽器をやっていた。そもそもピアノを始めたのも打楽器で音大へ行くため、副科ピアノとして中学校三年から習い始めたのだ。
打楽器の基礎練習として、メトロノームのねじをいっぱいまで巻いて、それが止まるまで基礎打ちをするというのがある。その基礎打ちが、メトロノームとぴったり合うとメトロノームの音が鳴らなくなるのだが(スティックで打った振動とメトロノームの発音振動が寸分たがわず重なると、打ち消し合ってメトロノームの音が消える)、その練習を数年間も繰り返し、体の中に速度を浸み込ませてきた。だから、メトロノームの振り子を見ながら合わせるのは、はっきり言って得意だ。
なのに、メトロノームに合ってない、リズム感ゼロ、いままで何やってきたの?と来たもんだ。いやいや、遅れてたのはババァ、あんたじゃん。。でも、こういうババァは人の話は聞かないのがセオリー。仕方ないから分かったようにうなずく。
はぁ。なんか、雲行きがすでにあやしい・・・
つづく
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